司法試験論文答案の整合性

司法試験・予備試験

学生の答案を添削していると、整合性が取れていない答案に出会うことがあります。

実際に、「この部分とこの部分との間に整合性がありません」と指摘されたことのある方もいるのではないでしょうか。

そこで、整合性の取れている論述とは、どのような論述なのかについて、説明していこうと思います。

具体例

抽象的な話をしても、なかなかイメージがわかないと思いますので、具体的な論述を見ながら、説明していくことにします。

あくまでも、論述の整合性を具体的に示すという観点から論述しているので、現実的な答案ではないかもしれませんが、その点はご了承ください。

1 本件で、甲は、○○という行為を行っているが、これが①××罪の「実行に着手」(刑法43条本文)にあたるか。②実行の着手時期が問題となる。

2 この点について、実行の着手とは、構成要件的結果の現実的危険性を惹起する行為をいう。そのため、②実行の着手時期は、構成要件的結果発生の現実的危険性を惹起した時点をいう。

3 本件において、甲は○○という行為を行っており、~~といえる。このように考えると、甲の○○という行為は、××罪の構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為であるから、この時点で、③構成要件的結果発生の現実的危険性を惹起したといえる。

4 したがって、①甲の○○という行為は、××罪の「実行に着手」にあたる。

具体的考察

まず、①において、甲の行為が「実行に着手」にあたるかということが問題なのですから、結論は、「甲の行為が「実行に着手」に当たる。」もしくは「…あたらない。」ということになります。

なので、1の問題提起に対して整合性のある結論は、4の①の部分ということになります。

次に、甲の行為が実行の着手にあたるかを判断するにあたっては、②で示したように、実行の着手時期が問題となります。

ということは、実行の着手時期がいつなのかということを論じなければ、整合性が取れなくなります。

なので、2の②のように、実行の着手時期がいつなのかということを論じる必要があります。

そして、②で示した規範と整合性を取るためには、結論として、規範で示した内容に当たるか否かを論じなければなりません。

したがって、3③の結論としては、「構成要件的結果発生の現実的危険性を惹起したといえる。」もしくは「…いえない。」という結論にする必要があります。

ナンバリングについて

このように見てみると、ナンバリングについても、考えることが出来ます。上記論述例をみると、1と4で整合性が取れています。また、1と2、2と3、という関係で整合性が取れています。

また、ナンバリングについても、1が問題提起、2が規範定立、3が具体的検討、4が結論と項目立てをしようと思えば出来るので、ナンバリングも適切であることがわかります。

ナンバリングは好みがあると思いますので、この論述例を見て、自分とは違うと思う方もいらっしゃるかと思いますが、あくまでも、説明のための論述例だと思ってください。

最後に

このようにしてみると、論述の整合性を取るということは、それほど難しくないと思った方も多いのではないでしょうか。

また、今回は、論述の構造を利用して整合性について説明しましたが、例えば、論理矛盾であったり、同じ答案上で理論的一貫性を欠いていたりといった、論文全体の整合性については、比較的イメージを持ちやすいと思いましたので、今回の説明からは省略しました。

論述の構造の整合性が取れてくると、それだけで評価が一変する可能性がありますので、これから答案を書く際は、論述の整合性を意識してみるのもいいと思います。

この記事を書いた人
ナオ

平成25年度の予備試験に合格。平成26年度の司法試験に合格。平成28年に弁護士登録。

都内で弁護士として実務に携わりながら、某大学法学部で司法試験、予備試験志望の学生のゼミで指導員をするとともに、司法試験予備校の論文答案添削など、司法試験の受験指導に積極的に取り組むサッカー大好き弁護士です。

個別受験指導もしています。

Twitter(https://twitter.com/nao_izumiya)

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