最近、司法試験や予備試験の受験生の方から「論証集は丸暗記した方がいいですか」といった質問を受けることがあります。
その他にも「論証」に関して質問を受けることが多くなってきたので、論証集(論証パターン・趣旨規範を含みます)の使い方について、私なりにコメントしたいと思います。
なお、この記事で「論証」という言葉を使うときには、一般的な意味ではなく、いわゆる「論証パターン」や定型化された趣旨や規範などのことを指します。
論証については色々と意見がありますし、意見が対立しやすいところではありますが、あくまでもひとつの意見として参考にしていただければと思います。
「論証」をすべて暗記することは可能?
論証集を、一言一句暗記することは、恐らく不可能でしょう。一つ二つならまだしも、数百もの「論証」を丸暗記することは、ほとんどの人にとって不可能だと思います。
また、仮にそれが出来る超人がいたとしても、理解せずに「論証」を丸暗記しただけでは司法試験では通用しません。理解が伴っていない知識は、使い方のわからない道具と同じようなものです。
司法試験に通用しないのであれば、やはり論証集を丸暗記することはあまり有効な学習法とは言えないでしょう。
論証集の存在意義
論証集を丸暗記するのが有効ではないからといって、論証集が司法試験合格の役に立たないかと言えば、決してそんなことはないと考えています。
『司法試験合格のために常に意識しておきたいポイント』でもお話しましたが、日頃のインプットにおいては、「学んだ内容を答案にどう表現するのか」を意識しながら論点を学習し理解を深めるということが重要です。
論証というのは、論点を答案で表現するときのテンプレートのようなもので、論理構成もしっかりしていますので、論証を読むことで、学んだ論点が具体的にどう答案に表現されるのかが明瞭になり、そのイメージを捉えて勉強を重ねることによりさらに理解が深まります。
このように、論証集は自分がインプットしたものを「どう答案に表現するのか」を考え、理解する際に参考にするという使い方に適しています。
論証集の読み方
では、実際に学習に論証集を利用するときには、どのように読むのが良いでしょうか。
ポイントは論証の論理構造を押さえるということです。
論理構造を押さえるというと複雑な作業に感じるかもしれませんが、論証がどのような道筋(理由)で規範を導き出しているのかを把握できればOKです。
これを意識して読んでみると、それぞれの文の中で、どの部分がキーワードなのかが何となく浮かんでくるはずです。このキーワードを押さえていくことが極めて重要です。
前述のとおり丸暗記は必要ありませんし、司法試験の答案上で、論証集と一言一句違わない文章を書く必要はありません。
キーワードを押さえた上で、そのキーワードを使って自分なりの言葉で、論理的に規範を定立できれば、基本的にはそれで問題ありません。
ただし、判例の言い回しであったり、具体的な規範自体は暗記してしまうことをおすすめします。
絶対に一言一句同じでなければならないというわけではないのですが、判例の言い回しや頻出の規範については、暗記してしまった方が論文答案を書く時間を短くできますし、判例の言い回しや通説的な規範についてそのまま書けると、しっかり知識があるという印象を与えることもできます。
そうは言っても実際に答案を書くときに「あれ?あの判例の言い回しってなんだっけ?」となってしまうこともあると思いますが、そんなときは慌てず自分の言葉で論理的に書ければ大丈夫です。
最後に
ここまで読んでいただければ、論証自体を暗記の対象とする必要がないことはご理解いただけたかと思います。
司法試験の勉強全体にいえますが、暗記の対象となるものとそうでないものをしっかりと分けて、暗記の対象となるものについては、暗記の時間を作り、何度も繰り返す必要があります。
暗記する必要のある知識というのは、理解の土台になる部分ともかなり重なってきますので、できれば早い段階から意識しておくと学習効果が上がりやすいです。
以上が、私が考える論証集の使い方でした。「論証集を使うにあたっては、まず理解ありき」ということを意識すると、より効果的に論証集を使うことが出来ると思います。
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