司法試験受験生必見!予備試験を二桁順位で合格した勉強法

司法試験の勉強法

今回は、『個別指導体験記:予備試験合格者その2』で紹介した方から、予備試験に合格した際の具体的な勉強方法について教えてもらいましたので、受験生のみなさんに共有したいと思います。

予備試験の論文で二桁順位を取る人がどんな勉強をしていたかというのは、多くの司法試験受験生のみなさんにとって参考になる部分があるのではないでしょうか。

今回非常に詳細に教えてもらったため、少し長くはなりますが、その分有益な情報がたくさんあると思いますので、勉強の合間にぜひ全部読んでみることをおすすめします。

忙しい方は、黄色のマーカー前後だけ飛ばし読みするだけでも骨子はつかめるかもしれません。

略歴

この方の略歴を紹介しておきます。略歴を見ただけでも、この方がどれだけの努力をしたか想像することができますね。

学歴

  • 2013―2016  私立横浜隼人高校(スポーツ推薦入学)
  • 2016―2020  日本大学法学部法律学科法職課程(指定校推薦入学)
  • 2020―現在  早稲田大学大学院法務研究科(既習・授業料全額免除)

予備試験受験歴

  • 2017 短答不合格(順位不明)
  • 2018 短答式合格(順位不明) 論文式不合格(2281位)
  • 2019 短答式合格(642位)  論文式不合格(1214位)
  • 2020 短答式合格(811位)  論文式不合格(475位)
  • 2021 最終合格(短答430位) 論文式(59位)、口述(22位)

予備試験合格のための勉強内容

大学時代

私は、大学1年生のころから、大学在学中に予備試験の短答に合格することを目標にして、勉強を始めました。

まず、憲法、民法、刑法の短答から勉強をしようと考えました。教材は、短答パーフェクト(辰巳)を使っていました。勉強漬けの毎日ではなく、通学時間などの空いた時間に問題をみて解説を読むことを繰り返していました。

2年生の5月に予備試験を受けるときには、憲法と刑法は全て解き終わっていましたが、民法は物権までしか勉強できておらず、その他の科目は模試で出題された問題を解いただけでした。

結果は、憲法と刑法は8〜9割の得点でしたが、そのほかの科目は5割程度で不合格でした(記憶が曖昧なので正確な数字は分かりません。)。

この結果から、短答パーフェクトの解説部分をしっかりと読み込むことだけで、十分に合格点が取れるということを確信しました。

大学2年生のときは、大学3年生の5月の試験で短答式試験に突破することを目標にしていました。

1年生のときと同様に、短答パーフェクトの問題・解説を読む勉強法でした。まだ時間的な余裕があることと、憲法、刑法で合格点を取ることができた慢心から、しっかりと勉強時間を確保することができず、隙間時間に短答パーフェクトを読む程度の勉強量でした。

短答式試験の結果は合格でした(この年、出題ミスがあったために繰り上げ合格者がいたのですが、そのうちの1人が私です。)。

この結果からも、短答パーフェクトの解説をしっかり読んで理解できれば、短答式試験は問題なく合格できると思います。

論文式試験までの時間は、受験生で使われている演習書の規範部分を抽出して、ノートにまとめる作業を行っていました。

この年に短答式試験に合格することは考えておらず、十分に論文式試験の準備をすることができませんでした。勉強は間に合わず結果は不合格でした(2281位)。憲法と刑法以外F評価でした。

私は、短答式試験の勉強で困ることはありませんでしたが、論文式試験の結果が散々たるものであったため、論文の勉強を抜本的に見直そうと思い、大学3年生の論文式試験の結果発表後から、泉谷先生のご指導を受けるようになりました。

内容は毎週1問、憲法、民法、刑法を順番にご解説していただき、それに加えて、予備試験の過去問のご解説をしていただきました。

この時点で、論文の勉強はほとんど行っていなかったため、予備試験の問題を解くことは難しかったですが、どのような出題方式なのか、どのように論じていくのか、出題者の意図は何か、受験生が書いてくるであろう論点、逆に書けないだろう論点まで、ご丁寧に解説していただき、予備試験の相場感や合格者のイメージが分かりました。

大学3年生の間は、論文対策は泉谷先生の課題を中心に勉強をしていました。

また、短答の点数がギリギリ合格(合格点+1点)であったこと、論文式試験の順位から大学4年時の合格は困難であると考えたことから、大学4年生の予備試験の目標は、短答式試験に確実に合格する力を付けることと、論文式で3桁の順位をとることに設定しました。

勉強法は、前に書いた通り、短答式試験は短答パーフェクトをしっかりと読むこと、論文式試験は泉谷先生の課題です。大学4年生時の予備試験は、短答式試験は合格(642位)でしたが、論文式試験は不合格(1214位)でした。

短答式試験で余裕を持って合格できる実力がついたことは自信になりましたが、論文式試験は目標達成できませんでした。

しかし、順位を大幅に上げたことや、予備試験後のロースクール入試では、中央大学大学院法務研究科には学費全額免除で合格し、早稲田大学大学院法務研究科には授業料全額免除で合格することができました。

ロースクール時代

この結果から、次の予備試験では合格を狙える位置にいると考え、ロースクール既習2年生の予備試験では最終合格を目標にしました。

勉強法は、短答式試験は安定して合格する実力がついたと考えたため、ほとんど勉強しませんでした。

論文式試験については上記の泉谷先生の課題に加えて、演習書の起案を泉谷先生にご添削していただいていました。各科目の演習書を起案し、ご添削を受け、解説を読み込むという勉強法でした。論文式試験直前には、実務基礎科目の特別対策も行なっていただきました。

コロナ禍で生活習慣がガラリと変わったこと、ロースクールの勉強が忙しくなったことから、ロースクール入学後は予備試験対策をする時間が減ってしまいました。結果は、短答式試験合格(811位)、論文式試験不合格(475位)でした。

合格まであと1点まで迫ったことから、勉強法に間違いはないと考え、前年と同じような勉強法を行いました。それに加えて、自分の知識に偏り、穴があると考えたため、論証集で取り上げられている論点について教科書や百選の解説、他の演習書などを用いて知識の補強を行うといった勉強を始めました。

また、知識として知っていても、それを表現することが上手くできないこと、表現するまでに時間がかかってしまい途中答案となってしまったこと(予備試験で会社法を途中答案にしてしまいました。その他の科目も表現に時間がかかってしまい、時間を奪われてしまっていました。)から、ロースクール生で自主ゼミを組み、勉強したことを議論して、アウトプットすることができる使える知識を獲得することに努めました。

結果は、最終合格(短答430位、論文59位、口述22位)でした。

以上が私の受験の歴史です。以下では、勉強法についての反省点や、役に立った勉強法などについて書いていきます。

悪かった点

  • 早い段階での短答式試験合格にこだわりすぎた。
  • 短答式試験の勉強に時間を費やしすぎた。
  • 論点の学習を疎かにしてしまった。
  • 事例問題の処理速度を速くする勉強を疎かにしてしまった。

良かった点

  • 短答式試験に確実に合格できる実力があったために論文式試験に集中して挑めた。
  • 最終年は論点の学習をしっかりとできた。
  • 単なる知識ではなく、使える知識を習得することができた。
  • 実務基礎対策をしっかりと行っていた。

私の大きな反省点としては、早期の短答式試験合格にこだわりすぎた点があります。短答式試験の成績が良くなれば、論文式試験の成績も比例的に良くなると考えていました。

しかし、短答式試験で問われる学力と、論文式試験で問われる学力は全く別物です。

短答式試験は、知識の絶対量が重要です。選択肢の正誤が判断できる程度の知識があれば正解を導くことができます。

他方で、論文式試験では知識を”使う”力が重要です。

論文式試験では、結論の当否よりも、知識を使いこなせているか否かで合否が分かれていると考えています。

勘違いをしてはならない点は、結論が適切か否かといった点も、知識を使って適切に事案を解決できているか否かという評価の考慮要素である点です。

このように全く別物(より正確に言えば、論文式試験においては、短答式試験の知識をより深化させた知識が必要という点において別物)の学力が問われていることから、短答式試験の勉強と並行して(若しくは先行して)、論文式試験の勉強をするべきであったと反省しています。

短答式試験に合格しても、論文式試験に合格できなければ、予備試験に合格することはできませんから、短答式試験合格だけを目標に勉強をすることは遠回りの勉強法であると考えています。

役に立った勉強法としては、短答式試験については短答パーフェクトの読み込みであり、論文式試験については演習書と論証集に記載されている論点の学習です。

短答式試験については、過去に出題された知識が様々な言い回しで(「様々な角度から」というよりは、「同じ角度から」、違う言い回しで)出題がされているため、過去に出題された知識の習得が重要です。

気をつけなければならないことは、正の知識だけではなく、誤の知識を習得することもまた重要である点です。

教科書には、正の知識のみ載っていますが、過去問には誤の知識も載っています。そして、誤の選択肢も再出題がなされます。

短答式試験の対策としては、その選択肢が正なのか否かを判断する知識に加えて、誤なのか否かを判断する知識を習得することで、正答率が上がると考えています。

この知識を習得するためには過去問の学習が大切であり、過去問の解説が1番詳しい短答パーフェクトの利用が適切であると考えています。

論文式試験については、事例問題の形で、論点が出題されますから、まず論点の学習が重要です。

論点の学習とは、論証の暗記ではなく、

  • どの事例において、なぜその論点が問題になるのか
  • その論点についてどのような解決策(いわゆる規範・ルール)が存在するのか(もっと言えば、与えられた事例についてある解決策がなぜ使えないのか)
  • その解決策の根拠は何か、存在する解決策のどれを採用することが適切か
  • その解決策にどのような事実をあてはめるとどのような結論が導かれるのか
  • その結論に修正が必要になるのか

などの幅広い学習が必要になります。

これを無視して、規範の暗記に努めても、合格点は取れません

この論点の学習には教科書をしっかりと読み込むことに加えて、演習書の解説を読み込むことが重要だと考えています。教科書・演習書を読む際には、上記の論点の学習を意識して読み込んでいただきたいです。

このような使える知識がなければ、論文式試験で合格することはできません(論文式試験合格の必要条件)が、その知識を答案に表現する力(使える知識を使う力)もまた、重要です(論文式試験合格の十分条件)。

教科書や演習書の解説をそのままの形で答案に表現することは、不可能に近いですし、そのままの形で表現するような出題はほとんどありません。

知識を使って、事例の問題点(特殊性)を指摘しながら、適切な結論を導いていく必要があります。その思考過程を答案上に表現することができなければ、点数にはなりません。

このような知識を使う力を習得するためには、言語化の作業が必要であり、文章にして伝えることや、言葉にして伝えることによって練習をすることが重要です。

口述式試験については、短答式試験・論文式試験で習得した知識の言語化が重要です。また、相手の意図を汲み取る力も重要です。

口述式試験では、短答式試験・論文式試験の知識を言語化して、試験官と良いコミュニケーションがとれれば、合格することができると考えています(したがって、論文式試験に合格した方々のほとんどは、この力を持っていますから、ほとんどの方が口述式試験に合格することができるのだと思います。)。

予備試験合格のための勉強方法まとめ

さて、どのように勉強するべきかのまとめです。短答式試験の勉強と論文式試験の勉強は並行することをお勧めします。

短答パーフェクトで知識を習得した後に、その範囲の論証集に載っている論点について教科書・演習書等を読み込み、論点の学習をすることが、知識の習得・定着について効率的であると考えています。

この勉強を一通りできたならば、教科書・授業等により体系的な学習をすることをお勧めします。

知識が体系的に整理されることで、論点の適切な深い理解に繋がります。その後は、論点をしっかりと理解して、正確に表現できるように練習することをおすすめします。

論証集の論点名だけをみてその論点をしっかりと表現できるか否か確かめる方法や、演習書の問題を解くこと、過去問を解くことなどによって練習してください。

この練習を繰り返せば、論点・論証を暗記することも必然的にできるようになります。

論点がしっかりと表現することができなかったり、論点の理解が不正確であれば、その都度教科書・演習書の読み込みや、表現方法の確認をしていくことが必要です。

この段階までくると、自分自身では誤りや不正確な点、改善点に気づくことが難しいですから、自主ゼミや、個人指導を受けるなどして、チェックしてもらうことが大切だと考えています。

私は、最終年は、ほとんどの時間を自主ゼミ等で会話(アウトプット)をしながら知識を確認する勉強に徹していました

知識を答案に表現するまでに時間がかかり、時間切れになってしまうことや、書きたいことを書けなかったことが多かったためです。

勉強したことを正確に、速く表現するためにも、アウトプットの機会や、個人指導を受ける機会は重要です(何より、人と会話をしながら勉強をすることは楽しく勉強できます。時間がかかっているように思えますが、より正確に使える知識を習得し定着させる勉強法としては1番の近道であるように思います。もちろん、誰とどのような勉強をしていくかの判断は大切です。)。

泉谷先生のご指導は、起案のご添削・ご解説を中心に受けていました。

ご添削は法律論の正確性、論理の一貫性から助詞の使い方、文章の繋ぎ方、接続詞の使い方まで、丁寧にご指導をしていただきました。

ご解説も対話方式で事案の問題点の抽出、論点までの事案の処理の仕方、論点の解決方法、結論の妥当性まで、本試験でどのような思考過程を辿れば良いかをご丁寧にご説明していただきました。

補足レジュメもそのままの形で答案に書けるように工夫されており、先生の思考過程が手に取るように分かる上質な文章で、学習に非常に役立ちました。

インプットの講座については、百選の解説講座を受けていました。判旨・解説の重要部分をピックアップして、噛み砕いて分かりやすくご解説してくださり、速く、効率的に学習をすることができました。

私の考える、合格に必要な力の全てが、泉谷先生のご指導には含まれていると考えています。1年目から泉谷先生のご指導を受けていれば、短期合格をすることができたと考えています。後悔先に立たずとはまさにこのことだと思います。

長々と、稚拙な文章を書いてしまい誠に申し訳ありません。少しでも、勉強法の確立に役立てていただけたら幸いです。私も、今回の機会を通じて、正確に表現する練習ができたと思います。貴重な機会をくださり、ありがとうございました。皆様の合格を心より願っております。

以上

さて、全部読んでいただいたみなさんは、

  • 自分の勉強は間違っていなかった
  • 勉強がまだまだ足りていないな
  • 今日からこんな勉強方法を取り入れてみよう

などなど、それぞれに様々な感想を抱いたのではないでしょうか。

ここまで読んでいただければ、今回協力してくださったこの方も喜んでくれると思います!

おわりに

最後に私の感想も紹介しておこうと思います。

まず改めて思ったのは、司法試験の勉強は「地味でつまらない反復継続が大事」ということです。私とは多少やり方が異なる部分もありましたが、大枠では同じ方向で勉強していたと思います。

また、みなさんにもぜひ真似して欲しいのは、定期的に適切な目標を設定し直している点です。

試験結果や自身の学習の進捗に応じて、最終的な予備試験合格(もちろんその先には司法試験合格という大目標がありますが)という目的地に至るためのマイルストーンを柔軟に設定していくことは、長い司法試験受験生活の中で、目的を見失わずに正しい学習の方向性を維持するためには非常に重要です。

今回の記事を読んで、少しでも多くの方が、「予備試験に上位合格している人でも、地味でつまらない勉強を継続的にやっていたんだ」ということを知っていただき、予備試験、司法試験の合格に向けて役立ててもらえれば幸いです。

この記事を書いた人
ナオ

平成25年度の予備試験に合格。平成26年度の司法試験に合格。平成28年に弁護士登録。

都内で弁護士として実務に携わりながら、某大学法学部で司法試験、予備試験志望の学生のゼミで指導員をするとともに、司法試験予備校の論文答案添削など、司法試験の受験指導に積極的に取り組むサッカー大好き弁護士です。

個別受験指導もしています。

Twitter(https://twitter.com/nao_izumiya)

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