令和5年の予備試験短答式試験は、合格点が168点、合格率20%と、例年に比べると、かなりハードルの高い結果となりました。
そこで、今回は過去の予備試験短答式試験のデータを基にして、令和5年の試験が今までの試験と比べてどう評価されるのかを考えてみたいと思います。
法務省の公開しているデータをExcelでまとめてみたので、元データを参照したい方はそちらも確認してみてください→Excelファイルをダウンロード
合格率からの考察
令和5年の短答式試験の合格率は20%でした。
これは、平成26年の19.5%、平成23年の20%と同程度のものです。これにより、令和5年で13回目となる予備試験の中でも、トップレベルに低い合格率であることがわかります。
合格点からの考察
令和5年の短答式試験の合格点は168点でした。
これは、平成25年~27年の170点に次ぐ高い水準です。
また、平成25~27年の全体平均点は平成25年から、139.5点・137.3点・138.7点である一方で、令和5年は134.5点です。これは平成25~27年の全体平均点から3~5点程度低い数字です。にもかかわらず、合格点は168点と2点しか低くありません。
このように、平成25~27年と比べると、全体平均点はそこまで高くないにもかかわらず、合格点が高いことがわかります。
全体平均点からの考察
令和5年の全体平均点は、134.5点でした。この点数と近い全体平均点の年というと、平成24年の134.7点、平成28年の134.6点となります。
ではこの年の合格率はどうだったのかを見ると、平成24年が23%、28年が23.2%と、令和5年の合格率より3%程度高いことが分かります。
また、平成24年・28年ともに合格点は165点と、今年より3点合格点が低いことが分かります。
このように、令和5年の全体平均点からすると、合格率が低く、合格点は高いことが分かります。
一般教養からの考察
令和5年の短答式試験は、一般教養の平均点が高いことも話題になりました。そこで、一般教養の平均点という観点からも少し見てみようと思います。
まず、令和5年も含めた13年分の一般教養の全体平均点は25.8点です。意外と高いですね!
この全体平均点よりも高かった年は、平成24年の27.2点・平成26年の31.5点・平成27年の28.1点・平成30年の27.9点、そして令和5年の28.4点があります。
次に、令和5年以外の年で、令和5年の合格率・合格点を上回っている年を見ると、平成26年しかありません。
また、全体平均点を見ても、平成30年は、131.1点と全体平均点は令和5年よりも低いです。
このように、一般教養の平均点が高いからといって、必ずしも合格率の低下や合格者の低下を招くわけではありません。
これらから考えると、確かに、令和5年の合格率の低さ・合格点の高さに一般教養が影響していることは否定できませんが、例年の成績から考えると、それだけではないように思えます。
近年の傾向からの考察
近年の傾向を見ると、平成30年から令和3年までの合格率は、低くても平成31年の22.8%であり、平成30年・令和2年は23.8%で、平成30年~令和3年までの合格率は23~24%程度と4年連続で高い合格率となっています。
また、上記4年間の合格点も156~162点と高くありません。
しかし、令和4年は合格率が21.7%と下がっており、令和5年は20%となっています。
これは、令和4年から受験生が2000人ほど増加したことに起因すると思います。また、受験生が増加しても、合格者の数はそれほど変化がありません。令和3年から令和4年で100人程度増加したにとどまります。これと対照的なのは、平成29年から平成30年で2299人から2661人と300人以上増加している点です。受験生の数はそれほど増加していないにもかかわらず、これだけ増加しています。
そして、令和4年から令和5年は、受験生が増加したにもかかわらず、合格者が150人ほど減少しています。
ここからわかるのは、司法試験委員会は、受験者数が増加したとしても、一定数以上は合格させないというスタンスをとっているということです。また、上記4年間と令和5年での短答合格者をどの程度にするのかというスタンスも異なっているように思えます。少なくとも、合格者を増加させようというスタンスではなさそうです。
これは、法曹養成コースが出来たことや在学中受験が可能になったことで、ロースクールに人材を流したいのかなと考えることもできると思います。また、採点委員の添削可能通数とも関係しているのではと考えます。
総括
以上、過去のデータから色々と考察してきましたが、少なくとも、令和5年の合格者の減少・合格率の低さは一般教養だけが原因ではなく、司法試験委員会が予備試験合格者を無暗に増やそうとしていないということも起因しているように思えます。
ただ、受験生としては、13年間のデータとして、一般教養の平均点が25.8点ということを重く受け止めるべきだと思います。つまり、一般教養も6~7問は正解し、法令で150点程度とれは、かなりの確率で合格できるのです。
令和5年の結果は、「一般教養で点数を取らないといけない」ことを意味するのではなく、「法令でしっかりと150点以上を確保することが重要である」ことを意味するのだと思います。
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