学生からよく受ける質問で「短答対策として、過去問を何周すればいいですか?」といったものや、「短答に受かるためにはどのような勉強をしたらいいですか?」というがあります。
これらの質問から考えるに、受験生の中には、「短答と論文は別で勉強するもの」という認識を持っている人が少なくないのではという印象を持ちました。
では、本当に別物なのでしょうか。
私の司法試験短答対策
私個人の経験ですが、私は初回の司法試験の受験で、2点足りずに短答に落ちました。
そこで、短答の過去問を全科目買ってきて、1年間で8~9周ほど、過去問を回しました。その甲斐あってか、2回目の受験の際には短答に合格することが出来ました。
もっとも、点数はたいして伸びませんでした。具体的には208点が229点になっただけでした。
私は、「過去問をあれだけ解いたのに、これだけしか伸びないのか」と感じ、過去問中心の勉強に疑問を持つようになりました。そして、色々と考えていくうちに、7~8割は、短答と論文で求められる知識は一緒なのではないかと考えるようになりました。
なぜなら、著名な判例は、短答論文通じて重要なのに、その判例を学ぶ際に、「これは短答用」「これは論文用」と分けて勉強することは非効率的だと考えたからです。
短答も論文も問われている知識は基本的に同じ
そこで、私は、一つの結論に至りました。
それは、「ことさら短答と論文の勉強を分けて考える必要はない」ということでs.
一つの知識(論点)があった時、その知識を使って〇か×かを判断できる思考が短答の思考で、その知識を正確に答案上に示すという思考が論文の思考であって、求められている知識自体は同じであるということです。
短答では、同じ知識を問う問題が形を変えて繰り返し問われます。
そのため短答の過去問で取得できる情報は、その知識のひとつの側面「だけ」なので、どうしても断片的な理解になりがちです。
しかし、問われている知識の幹をおさえてしまえば、どのように形を変えられても、〇か×かを正確に判断できます。また、その知識(論点)に関する論述もすることができます。
つまり、基本的な事項をしっかりと理解し記憶し表現できるようになっていれば、少なくとも、基本的事項については、短答でも正しく正誤を判断できると私は考えています。
例外もある点に注意
もっとも、論文ではあまり使いませんが、短答用の知識としておさえておく必要があるものもあります。
それが、いわゆる「短答プロパー」と呼ばれる知識です。
これに関しては、論文の勉強だけでは足りないので、短答対策のためにおさえる必要がありますが、このような知識は、それほど多くはないと思います。
短答と論文の勉強を分ける必要は基本的にはない
このように考えると、普段自分が使っているベーステキストを読むこむことで基本的事項を理解し記憶する方が、重要だと思います。
もっとも、インプット偏重になるのも困りますので、アウトプットもバランスよくしていく必要があります。
例えば、自分がその日勉強した部分について、短答の過去問を解き、ベーステキストには記載のない情報は、適宜ベーステキストに加筆していくことで、アウトプットをしながらベーステキストをより充実させていくことができますし、短答の問題を解くことで自分の理解度を計ることもできます。
最後に
ちなみに、私は、2回目の受験の後、短答の過去問は、直前期に1周だけして予備試験の短答に合格しました。翌年の司法試験の時も同様に直前期に1周だけして、当時350満点だった短答で253点(1500位程度)をとることができました。
もちろん短答の過去問を大量に解いた経験もあっての点数ではありますし、短答の問題を多く解いて勉強することも効果的ではあります。
しかし、漫然と勉強をするのではなく、短答の対策をするときも、論文の対策をするときも、「知識の幹はどこにあるのか」ということを意識していると、かなり勉強の質が変わってきますし、司法試験合格に近づきます。
色々な勉強方法があると思いますが、確実なのは、短答で問われる知識の多くが論文でも必要な知識であるということです。そう考えるだけでも、短答と論文の勉強を無理に分ける必要はないのではないでしょうか。
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