Twitterなどを見ていると、会社法がわからないというツイートを目にします。
教え方にもよるのだと思うのですが、あの膨大で細かい条文を頭からやっていこうとすれば、自分が何を勉強しているのかわからないという状況に陥るのは、無理のないことだと思います。
なので、今回は、すごく簡単に会社法の全体像を掴んで、少しでも会社法を理解しやすくするための記事を投稿したいと思います。
会社法を学習する際に、「いまどの部分が(どの関係性が)問題になっているのか」ということを意識しておくと、学習効率がかなり変わってきます。
なお、テーマがテーマなので、細かいことは捨象する点については予めご了承ください。
会社法の基本的な構造
会社法の全体構造を掴むには、株式会社に関わる「登場人物」とその関係性を把握する必要があります。それをすごく簡単な図にすると、以下のようになります。
主な登場人物としては、上の図にある「株式会社」「株主」「取締役」「第三者」です。
会社法は、これらの登場人物の利益を調整するために、多くの規定を定めていますが、細かいことは省略して、会社法の全体像を見ていきましょう。
株主
株主は、その会社の株を保有する人達です。
会社は、株式を発行し、その株式を購入した者は株主となります。株主は、株式会社のオーナーでもあります。なぜなら、株式を購入することによって、当該会社に出資をしているからです。
このように、株主は株式を購入することにより、その会社の株主、即ちオーナーになるわけですから、当然、株式購入に係るお金をしっかりと会社に支払わなければなりません。
そうしないと、会社には資金が入ってきませんし、出資もしていないのにオーナーということになってしまうからです。
また、株式会社の株主は、有限責任とされており、自分が出資した限度において責任を負うので、しっかりと出資をしないと、株式会社と取引をしている第三者との関係でも問題になってきます。
また、株主は、後で説明しますが、株式会社の経営を取締役に委ねています。
なので、その取締役が自らがオーナーである会社に損害を与えた場合には、当然に損害賠償することが出来ます。
また、経営は取締役に委ねているものの、オーナーである以上、一定の方向性を示して、それに沿って経営を行ってもらう必要があります。そのために株主総会があるのです。
したがって、株主総会においては、会社経営の大枠を決めたり、経営した結果どのような収支になったのかといったことを報告したりすることになっています。会社のお財布事情は、オーナーが一番気になるところですよね。
取締役
取締役は、株主には会社を経営する能力と意思がないことから、経営に関しては取締役が行います。
会社を経営する上では、取締役に一定程度の裁量を与える必要がありますが、あくまでも、取締役は、株式会社との関係では委任関係にあるので、善管注意義務ないし忠実義務を負います。
したがって、これらの義務に反した場合には、責任を取らないといけません。
また、上記義務違反によって、第三者に損害を与えたような場合には、第三者に対して損害賠償責任を負うこともあります。
取締役は、特定の株主を優遇したり、特定の株主の権利行使に関してお金を払ったりしてはいけません。これが行われてしまうと、他の株主との関係で不平等が生じたり、会社財産が不当に流出してしまったりするからです。
会社財産は、会社と取引関係にある第三者にとっても重要です。上述の通り、株主は有限責任のため、第三者は、基本的には会社財産からしか債権を回収できないからです。
株式会社
株式会社の本質は、多数の出資者から投資を受け、大規模経営をすることを会社法は想定しています。
そのためには、出資を容易にすることが必要です。そこで、株式会社においては、株式と有限責任を採用しているのです。
株式会社のオーナーは株主であることは既にお話ししましたが、多数の出資者(株主)がいる場合、当然出資の多い株主が強い発言権を持つことになります。
そうすると、株式割合(持株比率)というのが、とても重要になってきます。
そこで、既に株主が存在する場合において、第三者に対して株式を発行して出資を募る際には、既存株主が不当な不利益を受けないように配慮する必要があります。ここは、株式会社(≒新規株主)と既存株主の利害が衝突する場面でもあります。
即ち、株式会社としては、出資を募るわけですから、新規株主が出資しやすい、つまりなるべく安価で株式を売りたいわけです。これは裏からいえば、新規株主は1円でも安く株式を取得したいということになります。
でも、そうすると、既存株主が保有している株式の価値が下落してしまいますので、会社法は、株式会社の出資目的と既存株主の保護のための規定を置いているのです。
第三者
第三者は、上述した通り、株式会社が有限責任を採用したことによって、基本的には会社財産のみからしか債権回収が出来ません。
なので、取引関係にある第三者にとっては、会社のお財布事情というのはとても興味があります。
そこで、会社法は、一定の要件を満たす第三者に、会社に対して「お財布の中身を見せて」と請求することができることとしております。具体的には、会計帳簿や財務諸表といったものですね。
また、第三者にとっては、本来配当が出来ないにもかかわらず、勝手に取締役が配当を株主に行った場合、株主にとっては、違法配当であったとしても利益を享受できるのですから、自分から違法配当だと主張することは難しいです。
そこで、一定の要件を充足した会社債権者には、違法配当が行われた場合「そのお金を戻せ」と株主に言うことが出来ます。
最後に
少し長くなってしまいましたが、以上が会社法の全体構造を簡単に説明したものになります。
本当は、もっと書きたいのですが、それだと、簡単に説明することになりませんし、あくまでも「登場人物にはどんな人がいて、どの登場人物同士の利益調整のために、会社法が様々な法規制を行っているのか」というイメージだけ持っておけば、少なくとも今何を勉強しているのかくらいは把握できると思います。
この記事が少しでも皆様の会社法への理解の一助になれたら嬉しいです。
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